デンマーク刺しゅう留学記:スカルス手工芸学校
白糸刺しゅう
2023.06.29
私がスカルス手工芸学校に留学したのは2009年のことです。今とは変わっていることもあるかもしれませんが、これから刺繍留学したい人の参考になれば嬉しいです。
この記事を読んでわかることは、フォルケホイスコーレとは何か?スカルス手工芸学校の場所、学校生活についてです。
フォルケホイスコーレとは?
フォルケホイスコーレは大学、大学院、専門学校とは違う17歳以上だったら誰でもいける学校です。語学、建築、農業、デザイン、スポーツなどいろんな種類の学校があります。
ディプロマはもらえないので、テストや卒業試験とかもないです。
私はサーティフィケイト(修了証みたいなもの)はもらえました。フォルケは簡単にいうと自分がやりたいことを探すための場所みたいな感じです。
私が行ったスカルス手工芸学校は、手芸に特化したフォルケで刺繍、編み物、洋裁、革細工、陶芸などのいろんな手工芸が学べる場所です。
費用の3分の2は国が出しているので、学費が安いです。今は円安で1クローナ21円を超えているのですが、それでも安いですよね。
フォルケはデンマーク人のための制度のため、外国人の受け入れに制限があり、私が行った時はクラスの3分の2がデンマーク人で外国人は3分の1まででした。なので、デンマーク人が少ないと外国人の受け入れる人数も減るみたいな。
私が行った年は日本人が多くて私を含めて6人。日本人以外だとアイスランド人、フェロー諸島の人とかもいました。アイスランドもデンマークに統治されてたし、フェロー諸島はデンマークの自治領なのでデンマーク語ができる外国人が多かったです。
フォルケによって期間が違いますが、だいたい長期プログラムと短期プログラムがあり、短期だと1日から行けるところもあります。とにかく学費が安いので、フォルケからフォルケを転々としている人もいました!
スカルス手工芸学校の場所
スカルス手工芸学校はすごい田舎にあります。スカルスはユトランド半島という、ヨーロッパ大陸に繋がってる北の方に位置していて、コペンハーゲンから電車とバスを乗り継いで5時間くらいです。
留学当時(2009年)はiphoneだったのですが、今みたいなグーグルマップも発達してなくて、印刷した地図を持っていったのを覚えてます。時代!!
日本からの便だと午前中につくフライトがなくてコペンハーゲンで1泊してスカルスに行きました。
スーツケース2つ持って、電車乗り継いで…。ヴィボーという最寄りの駅からはタクシーでいこうって思ってたのにタクシーもいなくて、結局バスで行きました。バスで20分くらいの場所にスカルス手工芸学校はあります。
バス停の目の前なので、バス停からは迷わずにすぐに行けます!が、スカルスに行くまでが長すぎ…ちなみに、ヴィボーはずっと昔はデンマークの首都だった場所で、古い街並みがとてもきれいな小さな町です。
デンマークの人たちは、車でくる人が多いです。私のコペンハーゲン在住のお友達も、スカルスの週末コースとか1日コースに参加しているのですが、コペンから車で4時間半くらいだから気軽に行けるわよ〜!って言っています。海外で運転することに抵抗のない方は、コペンハーゲンから車で行ってもいいかも!
学校生活・1日のスケジュール
フォルケのスタンスとして、寮生活をするというのがあります。フォルケができた時代は全員寮生活だったのですが、今は通いの人もいます。私たちは当然ながら寮に入ります。
1階が学校で2階が寮になっています。私は運良く一人部屋でした。4~5畳かな。ベッドと机と小さなクローゼットがあって。去年、1週間コースに申し込んでいたのですが(コロナでキャンセルになった)、今は一人部屋を希望する場合は追加料金がかかります。長期で行かれる方は半年以上の長い生活なので、一人部屋の方が気楽で良いと思います。トイレとシャワーは共有のもので、ご飯は3食学校の食堂で無料でたべれます。
2ヶ月に1度くらいクッケンというキッチン当番があって、テーブルセットとか食器のお片づけをします。それ以外は自分のお洋服のお洗濯と、せまいお部屋のお掃除くらいしか家事がなくて最高でした。
朝は朝会があります。デンマークはプロテスタントの国なので聖歌を歌って、先生のお話を聞きます。多くの人がたった10分か15分の朝会の時間も編み物をしているのが印象的でした。
9時くらいから授業が始まるので、教室に行って15時過ぎまで授業があります。
お昼ご飯以外に10時くらいにも休憩があって、コーヒーとニンジンとか食べたりして。デンマーク人は🥕が好きで、よくポリポリかじっています。スーパーにもスナックニンジンという小さくて甘いニンジンが売っていて、息子の友達もお弁当にニンジンを持ってくる子が多いです😳
学校では毎日のようにケーキやクッキーを焼いてくれるので、体重が増加します…授業が終わったらケーキやクッキーを食べながら休憩して、そのあとにお友達と近くのフィヨルドにお散歩に行ったり、ヴィボーという町に手芸の材料の買い出しに行ったり。お夕飯まで自由に過ごします。
授業について
日本との大きな違いだと思うんですけど、授業が受け身ではありません。
もちろん、カリキュラムみたいなのはあるし、刺繍だったら覚えるステッチとか習うステッチはありますが、何をやりたい、どんなものを作りたいというのは、こちらから提案するんです。
先生も何を作れとは言わなくて「何を作るの?」って聞いてきます。「これを作りたい」というと、先生が「ここはこうしたほうがいい」とか「材料もこれがいい」とかアドバイスをくれる感じです。なので、完全な受け身な人は行っても困惑しちゃうかも。授業中もじーっとだまってたらスルーされます。
そういう意味でも、自分探しのための学校なんだなって思います。学校の中にも本も図案も材料もたくさんあるし、刺繍といってもいろんな刺繍があって、白糸もあればもっとデザイン性の高いアートっぽいものもあるし、古典的なフランス刺繍もあるし、いろんな技法をミックスして作品作る人もいるし。
自分の好きなこととか、好きなデザインとかを知るためにフォルケに行くというのはすごく理にかなってるなって思います。
20代のときに日本とは全然違う環境で、自分と向き合う時間が過ごせて私は幸せだったなって思います。価値観も大きく変わりました!
ちなみに、刺繍糸や刺しゅう用リネンなどの基本的な材料は学校で買えます。毎月月末に現金で精算していました。ヴィボーにはいくつか生地屋さんや毛糸屋さんがあって、スカルスの学生証を見せると割引で購入できました。デンマークはすごく物価が高く消費税も25%なので、材料代は結構高くつくかも!
英語力は必要?
スカルスに留学を検討されている方で英語力が心配な方も多いと思います。私の考えではありますが、英語力は要ります。英語が全然できなくてスカルスに行く人もいるみたいだけど、何しにいくのかな?って思ってしまいます。
授業はもともとデンマーク語なので全然わからないのですが、デンマーク人はほぼ英語が話せるし、近くの子が英語に訳してくれたり必ず助けてくれるので、デンマーク語力は不要です。デンマークに住んでいる私ですが、自慢じゃないけどデンマーク語は全然できません😜行政サービスもスーパーもレストランもとにかく英語が通じます。
デンマーク語ってすごい難しい言語なんですよね。読み書きは簡単だけど、発音がすごく難しいので、デンマーク語の習得に時間を割くのであれば英語力を上げて行った方が役に立ちます。
タック(ありがとう)とヴィシース(See you!)だけデンマーク語であとは全部英語でOK!
長期で行く場合は、刺しゅうだけでなくて洋裁や編み物、陶芸などいろんな授業があります。目で見て習えるステッチもありますが、話を聞いて理解する場面の方が多いです。日本人は日本人同士でかたまってつるむ傾向にありますが、せっかく留学に行くのならデンマーク人や他の国から来た人ともコミュニケーションをとれた方が良いに決まってますよね!
改装されたので、このスペースはなくなってしまったと思いますが、休憩をしたり夜にワークショップをしたりする場所です。キャンドルを炊いて、みんなでお喋りしたりお酒を飲んだりしました。デンマーク人は世界で一番キャンドルを消費するそうです。昼でも夜でもキャンドルを炊いています。
課外活動
長期ブログラムだと修学旅行があります。私のときはベルリンでした。今年(2023年)はパリだったそうです。私が留学したときは、修学旅行の旅費も学費に入っていました。なんて太っ腹!
ベルリンまではバスで行きます。8時間とか10時間とかそのくらい。ベルリンではデザイナーさんのアトリエを見学しに行ったり、新進気鋭のデザイナーのお洋服を置いているセレクトショップを回ったり。夜はミュージカルを見たり素敵なレストランでのディナーもありました。
すごい楽しかった〜
私はベルリンから仲良しの日本人とデンマーク人やフェロー諸島の子たちとアムステルダムとブリュッセルに行きました。7人〜8人で行ったのでワイワイしてすごく楽しかったです♪
他にも学校がお休みのときに、イギリス、スペイン、イタリア、スイスに遊びにいきました。4月〜6月まではお休みが多いのでいろんなところに旅行に行けますよ!
まとめ
もし行こうかどうか悩まれている方がいたら、絶対行った方がいいです!!行って後悔することは絶対にない!(キッパリ!)
1日中、自分の好きなことにだけ没頭できる時間は貴重です。デンマークみたいな少し独特な国に長く滞在するのも、すごく良い経験になると思います。旅行で1週間コペンハーゲンに来るのとはぜんぜん違う体験ができます。
とくにへデボを刺している方は、コペンハーゲンのデザインミュージアムやGreve美術館でへデボの作品などを見ると感動すると思います!
スカルス手工芸学校に留学を検討されている方の参考になれば嬉しいです。